うつ病日記

うつ病で2018年秋から休職中

2019年8月8日木曜日

就寝時刻:-

起床時刻:-

気分:55点(100点満点)

 

前日は平野啓一郎『マチネの終わりに』を読んでいた。眠れなかったので音楽を聴きながら横になって目をつぶるが、眠りには落ちない。せいぜい5時台に1時間くらいか。眠れないので諦めて6時すぎに外をふらっと歩いてコンビニで栄養ドリンクを飲み、起き続けることにする。そもそも前日が16時起きだから、朝6時の時点で起きてから14時間しか経っていない。会社に行っていた頃なら7時に起きて夜の21時くらいにあたるから眠くなくてもおかしくはない。

7時半にカフェのモーニングに行く。何もすることが思いつかないし集中力もそこまでではないので、『進撃の巨人』のネタバレを文章で読む。明日最新話を買って読むのが楽しみである。いったん家に帰ってゴロゴロしていたらお腹が空いてきたので12時ごろに昼食の油そばを食べに出かける。またカフェに入って文章を書きながら時間をつぶし、いったん帰って2時間ほど昼寝。またダラダラして、何とか買い物に出かける。

新宿で書店に寄り、クンデラ『生は彼方に』を買う。ユニクロでチノパンを買う。前に持っていたやつが綻びたわけではないが、洗濯・乾燥をミスったのか、においがとれなくなってしまったので。と思ったけれど、どうせならダメ元で重曹を試してみればよかったかもしれない。

 

生は彼方に (ハヤカワepi文庫)

生は彼方に (ハヤカワepi文庫)

 

 

 

マチネの終わりに (文春文庫)

マチネの終わりに (文春文庫)

 

 

 

平野啓一郎はいけすかないイメージを持っていたけれど、無駄に晦渋な文体で頭でっかちな抽象論をぶつという悪いイメージを持っていたけれど、『マチネの終わりに』はとても読みやすくて面白かった。偏見を反省している。

恋愛小説であり、芸術小説である。作中の演奏や映像作品の描写が巧みで、まるで追体験させられているかのよう。文章で表象されていることによって経験を貧しくさせられているような感触がまるでない。恋愛小説としては、出来事が淡白でありながら劇的なところがよい。あくまでちっぽけでありがちな出来事に過ぎないということへのアイロニーの感覚も忘れない。作中の逸話のユーモアも良い。ペットのしじみの話の絶妙な座りの悪さなど、書けてしたり顔をしたのではないだろうか。したり顔に値すると思う。

そして、大きな社会的出来事との接点を忘れない。真空でミクロな人間関係が展開しているのではなく、マクロな時代背景の中で起きていて、それが無理なく人間ドラマに織り込まれている。イラク戦争PTSDリーマンショック東日本大震災(これだけドラマとの結びつき方が一段落ちる気がしないでもなかったけれど、恋愛のドラマの山場を越えた後に配置されていたからしょうがないのだろう)。こうした同時代の評価の確定していない出来事を果敢に書き込むだけでなく、ユーゴ紛争や原爆といったさらに深層の歴史ともリンクさせていく。アメリカに対しても、読者は洋子に感情移入するだろうからある種の自己責任論・自由主義に対して批判的に見ることになるだろうが、一方でイラクの少女を楽しませ物語を動かしていくのが「American Songbook」であるというように、両面的な評価を忘れない。

軽快で卑近でポップな読みやすさと、緻密な重厚さとが両立されている。これはすごいな、と思った。完全に脱帽した。良い読書体験だった。